具体的に言わなければ伝わらない。養護学校で学んだこと

物事を伝えることは難しいことです。「あうんの呼吸」「以心伝心」で伝わればいいのですが、そんなことは、あまりないのではないでしょうか。
具体的に言えば伝わりやすくなることを知っていますが、めんどうで省略してしまうことがほとんどです。具体的に言うことの大切さを養護学校の生徒に学びました。

*大阪にて(イメージです)

養護学校、今は特別支援学校

養護学校勤務で多くのことを学びました。今は特別支援学校と言います。

 

体育の先生になりたくて体育大学に入学しました。
大学を卒業後はじめて常勤講師として勤務したのは養護学校でした。
当時は、盲学校、聾学校や肢体不自由の養護学校、知的障害の養護学校などに分かれていました。

今は養護学校とは言わず、特別支援学校と言います。石川県でも養護学校が統廃合され、
障害を持った児童生徒が大きな特別支援学校で一緒に学校生活をおくっています。

養護学校では、小学部、中学部、高等部と呼びます。
私は10数年間の講師生活のほとんどが養護学校での勤務でした。
小学部、中学部、高等部にも行きましたし、肢体不自由、知的障害、盲の
児童生徒と接し仕事をしてきました。
とても楽しく充実した時間でした。

今はトレーニングコーチとして仕事をしていますので、少し分野が変わりましたが
サポートする基本は養護学校で学んだことがほとんどです。
特に人に伝えることの難しさを学んだのも養護学校の勤務でした。

 

具体的に伝える。そうしなければ伝わらない。

「具体的に伝えなければ伝わらない」と学んだのも養護学校でした。

 

養護学校には重複障害を持った児童生徒もいます。
重複障害とは、障害をいくつか持った児童生徒です。
私が担任だったわけではありませんが、一緒に活動をしていた小学部4年生の
U君は知的障害と、四肢に少し麻痺を持った児童でした。
麻痺は少しありましたが、とても活発で高いところが大好きでした。

U君と数人で掃除をしていた時の話です。
掃除の時間と言っても児童はほとんどできません。先生がほとんどやるのですが、
子どもたちも参加です。

その時は教室の床の水拭きをしていました。
私を含め先生が一生懸命、掃除をしていますが、子どもたちは近くで遊んでいます。
遊んでいるといっても一人遊びです。重度の知的障害があるので、掃除といってもできないのです。
先生と一緒の場所にいて、少し手伝うのが彼らの学習なのです。
掃除という授業なのです。

U君も一人遊びをしていましたが、先生のお願いは聞いてくれます。
「ぞうきん、机の上に持って行って」
「そこにあるぞうきん、先生に持ってきて」
などと言うと、しっかり持ってきてくれます。

もう一度確認しますが、先生が楽をするためではなく、これが授業なのです。

そこで私は失敗をします。
U君に的確に伝えることをしなかったのです。

ぞうきんが汚れたので、洗おうと思いU君にお願いをします。

「バケツ、先生に持ってきて」と。

U君は何をしたでしょうか。

U君は水の入ったバケツを持ち上げ、床に水をぶちまけ、カラになったバケツを
私の所に持ってきてくれたのです。

それを見ていた先生たちは一瞬あぜんとしますが、なにも言いません。
私も「U君ありがとう」だけです。
もちろん注意はしません。なぜなら、U君は何も悪いことをしていないからです。

私が「バケツを持ってきて」と頼んだことに対して、U君はバケツをちゃんと
持ってきてくれたからです。
「ありがとう」しかありません。

もし、水の入ったバケツをそのまま持ってきて欲しければ、
「水の入ったバケツ持ってきて」
というべきだったのです。それだけでは不十分かもしれません。
正しくは
「水の入った水色のバケツ、こぼさないで持ってきて」
だったでしょう。

具体的に言わなければ伝わらなかったのです。
床にまかれた水は私が片づけました。
U君は何も悪くはありません。他の先生も誰も注意しませんでした。

具体的に伝える、明確に伝える。それが基本

教室そうじのバケツの話。決して特殊な話ではありません。私たちは人に物事を伝えるには、
具体的に、そして明確に伝えることが基本なのではないでしょうか。

 

U君が知的障害だったからではありません。
私たちは、いろいろな場面で同じようなことをしているのではないでしょうか。

バケツの話は極端な例かもしれません。しかし、人に何かを伝えるときは、
具体的に伝えていないことも多く、明確でもないこともあります。
こちらがしっかり伝えていないのに、伝わらないと嘆くのは、
水を床にまいたU君に注意することと同じではないでしょうか。

 

人に伝えることはとても難しいことです。それを仕事にしているのですから
たいへんなことでもあります。

「何度言ったらわかるんだ!」と怒る前に、
本当にわかる言葉で伝えているのか、
本当に伝わっているのか
一度確認しなくてはいけないですね。

 

U君は一度ペンキをぶちまけ、倉庫を真黄色にさせたアーティストです。

【編集後記】

先日、注文したTシャツが届きました。
買わないリストにはTシャツがあるのですが、
思い入れのあるTシャツでしたので迷わず購入。
その代わり、3枚のTシャツを処分しました。
1イン3アウトです。

【昨日のOnce a day】一日一回新しいことを

・SSサイズのカレー ゴールドカレー
・ある問い合わせ

おしらせ 2  
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